2012/01/24

Synthesis全般:ページ下の略語解・右側のページ

Synthesis 9.1書籍版 ページ下の略語解

右側のページの略語解について。



[ip stj2]:awaits confirmation | ip srj5•:either more recent or lesser known author | ip h1*:additional authors

まず、「ip」(Ipecac)はレメディ名の記載例。そのうしろの、略語の説明です。
レメディ名の後の「stj2」などのイニシャルは、「このレメディにはこの症状がある」と専門誌で発表したり、マテリアメディカに書いたりしたホメオパスの名前と出典名を短縮したものです。Synthesis 9.1書籍版でしたら、巻末付録の p.60から始る「List of Author Abbreviations」でその名前と書名を確認できます。


[ip stj2]:awaits confirmation 
     確認待ち


まだ十分に確認されていない、仮説に基づく情報は、このように [ 大括弧 ] に入れて記載されています。いわゆる「クラシカル」な手法でプルービングがされていないレメディや、まだ臨床例が少ないレメディの場合、シンセシスでは「仮説的情報」として扱われます。

例えばここの「stj2」は、周期表で有名なヤン・ショルテンと彼の著書 Homeopathy and the Elements の英語版を指しています。

ある元素はその周期表の位置で、その特性をある程度予測できるのと同じように、レメディになった際の特性も予測できるのでは、とショルテンは提案していますよね。Homeopathy and the Elements のレメディの多くはまだプルービングがされていません。すなわち仮説に基づいて、レパートリーに載せられているのですね。


ip srj5•:either more recent or lesser known author 
     最近の、もしくはあまり知られていない著者


こちらも上の例と似ていますね。最近の著者が加えた最近の情報であるため、古典を典拠とした情報とは区別できるよう、黒点をつけています。もっと大きな黒い点の Künzli dot と間違えないようにしてください。

ホメオパシーは常に成長し続けていますね。ホメオパシーの現場では毎年、興味深い新しいレメディのプルービングが行われていますし、昔からあるレメディでも、びっくりするほど21世紀に有効な、新たな側面が発見されて、より深い理解が生まれたりします。こうした新しい情報が実際にホメオパシーの利用者の役に立つためには、レパートリーに組み込まなければなりません。

しかし、ハーネマンの時代から200年以上使われてきたレメディと比較すると、新しいレメディや新しい情報の信頼性はどうしても低いですね。クラシシスト(厳格なクラシカル主義の人)はこのようなレメディや情報は使わなかったりします。初心者の私にとっても、それが新しい情報なのか、長い年月を経たずっしりと信頼の置ける情報なのかを区別できるのは、やっぱりありがたいかな。

ここの例の「srj5•」は、ジェレミー・シェアと、彼が主宰する Dynamis School で行なわれたプルービングをまとめた本 Dynamic Provings Vol. 1 ですよね。ジェレミー・シェアは、プルービングの方法論を、現代に実践可能な形に系統だてて復活させたホメオパス、と言ってらよいでしょうか。


ip h1*:additional authors
    この他にも著者あり


「h1」の h はハーネマン、1 は Materia Medica Pura のことです。ここにアステリスク * が付いていますが、ハーネマンの他の歴代ホメオパスからも、この内容は承認されていますよ、という意味。典拠の正しい、信頼性の高い情報、ということになりますね。

2012/01/23

Synthesis 全般:ページ下の記号解・左側のページ

Synthesis 9.1書籍版 ページ下の記号解

左側のページにはこんな記号解がありますね。本文の中で使われている記号の説明です。



▽ extensions | ○ localizations | ● Künzli dot | ↓ remedy copied from similar subrubric


▽ extensions 
  症状が〜に達する/〜へ延びる/〜へ拡がる「どこそこへ」

○ localizations
  症状が起こる位置、部位、器官、組織や系。「どこ」

● Künzli dot  
  「クンツリ・ドット」


ヨスト・クンツリ・フォン・フィンメルスベルグはスイス人の医師ホメオパスでした (1915〜1992)。ケントのレパートリーの基本構造と内容をベースにして、それまで統合されていなかった(抜けていた)H.C.アレン、T.F.アレン、ボリキ(ベリケ)、ボジェー、ボゥニングハウゼン、バーネット、クラーク、ゲルンズィ、ヘリング、クネール、ナッシュ、プルフォード、そしてケントとハーネマンのマテリアメディカの内容を丁寧に追加・統合してレパートリーを再編集。その結果が Kent's Repertorium Generale ですね。また、長年の臨床で繰り返し確認してきた症状やレメディに、この「ヨスト・クンツリの点」をつけたんです。これがついているルブリックやレメディは信頼性が高いとされています。

あ、ちなみにこの Künzli dot を、もう一方の、もっと小さな黒点と混同しないようにご注意ください。まったく別の意味を持っているんです。この次の、右側のページの記号解についての投稿を参照くださいね。

↓ remedy copied from similar subrubric 類似するサブルブリックから転写

もともとは、ヘッドルブリックの方には入っていなかったけれど、その下のサブルブリックだけに入っていたレメディを、昇格させてヘッドルブリックにも加えたことを示しています。このレメディはそのサブルブリックの狭義での適用よりもっと広い、全般的・全身的な働きが期待できるのではないか、という考えがここにはあります。

2012/01/19

GENERALS : VACCINATION その2

もう一つ。

GENERALS - VACCINATION ; ailments after :
- prophylaxis

ワクチン接種;その後に発症:
- 予防

このサブルブリックの「予防」は、何を予防しているのか、わかりにくいですね。
一見、「予防のワクチンを接種したあとに発症」と深く考えずに読んでしまうと疑問を持たないかもしれないけれど…

それとも、
「Ailments from vaccination ワクチン接種による悪い影響を予防するためのレメディ」
という意味なのかしら。

RADAR(ver.10)を見たら、そう、この後の方の意味らしいです。
書籍版にはないのですが、次のように追加で書いてありました:

GENERALS - VACCINATION ; ailments after :
- prophylaxis (to prevent this condition)

ワクチン接種;その後に発症:
- 予防(この状態・症状を防ぐため)

GENERALS : VACCINATION その1

p. 2063

GENERALS - VACCINATION ; ailments after :
- smallpox ; for
- variola ; for

ワクチン接種;その後に発症:
- 天然痘の


このsmallpoxとvariolaのふたつのサブルブリック、どちらも天然痘を意味します。なぜこのように別けたのか、謎です。どなたかわかりましたら教えてくださいね。

ところで、MacRepertoryの中のComplete Repertory 2010でこれに対応するルブリックを探してみたら、smallpoxとvariola2つがひとつのルブリックに組合わさっていました:

GENERALITIES : VACCINATION
- after, ailments from
・small-pox, variola


でも、入っているレメディが、微妙に違うんですね。
Synthesis には
- Malandrinum, Thuja, Vaccininum, Variolinum
Complete 2010 には
- Malandrinum, Sarracenia purpurea, Thuja, Variolinum

Sarracenia purpurea (Sarr.) はSarraceniaceae、瓶子草科(へいしそう科)の食虫植物。
Vaccininum (Vac.) は種痘をポテンタイズしたノソード(ノゾ)。Vaccinotoxinumと書かれていることがありますが、同じものだそうです。

ThujaとSarracenia以外はノソードですね。

2012/01/18

GENERALS : TWITCHING

p. 2061

GENERALS - TWITCHING
- electricity, as from :
・motion; from

ピクつき、引きつり
- 電気からのような:
・動き、動作から

動くことで、まるで電流が走ったような攣縮が起こる、と訳したと思います。

ここに入っているレメディはColchicumひとつですね。出典はMargaret TylerのHomeopathic Drug Picturesという本。このマテリアメディカを調べるとこういう記述でした:

A curious symptom, touch and motion bring on a painful sensation in the body as of electric vibrations…
奇妙な症状、接触と動きが電気による振動のような痛い感覚を引き起こす…

Phatakのマテリアメディカにもこの記述が:

Shock as from electricity through one half of the body; < motion.
電気のようなショックが半身を走る;動きで悪化。

2012/01/13

GENERALS : SYCOSIS

Sycosisと淋病について

p. 2052
GENERALS - SYCOSIS

複雑な話で、しつこいようですが(笑)ハーネマンのマヤズムの概念を考える手がかりにもなると思うので、昨日の話を少しまとめて、捕捉させてくださいね。

Sycosisのことを[淋病マヤズム]と訳されているのをよく聞きますね。それは違う!と主張する現代のホメオパスが多くいます。Sycosisは、今で言うGonorrhea(淋病)とは直接なんの関係もない病気だと言われたりするのです。恐らくSycosis、およびGonorrheaという単語の歴史的な変遷がこの混乱の原因なのではないかな、と思います。

まず、SycosisとGonorrheaの語源ですが:
Syco ← sukon (=fig イチジク)+ osis (= 病気や病態を示す語尾)
Gono ← gonos (=種、生殖器)+ rrhea ← rhoia (=流出、排出)

ハーネマンは、「慢性病論」でSycosisのことを figwart disease とも呼んでいます。(fig = イチジク、wart = イボ)
イチジク状のコンジロームと、性器から排出される炎症性の分泌物を特徴とする病気、とハーネマンは説明しています。この文章で、その分泌物をgonorrheaと呼んでいますが、病名のGonorrhea (=淋病)を指しているのではなく、当時のgonorrheaの意味(すなわち性器からの排出物)として使用していたと思えるんですね。

ではSycosisはなに?ってことになりますが、「慢性病論」にあるSycosisの描写から、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)の感染による尖圭コンジロームで、そこに2型の単純ヘルペスも同時感染でみられることもある、と言われています。

…このような突出物は最初は性器に出現し、必ずではないが通常、尿道からのgonorrhea(分泌)を伴う。これは性交渉を通じて感染してから数日間から数週間後、ときには何週間も後になって現れる。稀に乾いたイボのように現れることもあるが、より多くの場合、それは軟らかい海綿状で、特有の悪臭のある液を分泌し (それはまるで甘いニシン漬けの漬汁のようである)、出血しやすく、鶏のとさか(肉阜)やカリフラワーのような形状である。男性では、亀頭や包皮の表面や下に出現するが、女性では外陰の周囲や外陰そのものに生じ、その後腫脹し、しばしば非常にたくさんの数で覆われることになる。
(雑な訳で許してくださいね。サミュエル・ハーネマン「慢性病論[サイコシス]」より)

となると、MedorrhinumにしてもSycosisのノソード(ノゾ)なんかじゃないってことになりますよね。ややこしくなってきました...
上のことを言葉通り受けとめると、信頼されている多くのホメオパスが間違っている、ということになってしまいますね。だって、ケントの「哲学講義」にも、クラークのマテリアメディカにも、サンカランにも、「Sycosis=淋病」として説かれていますから。

しかし、本当にSycosisと淋病は関係ないでしょうか。ホメオパシーは(西洋医学的)病名や診断を参考にしながらも、それに導かれるものではありませんので、あるいはこんな議論はどうでもよいのかも知れません。目の前の現象を見ればよいのですから。だけど、興味深い病の歴史ですし、性病に限らず、今日までの病の進化について考える面白いきっかけにもなるような気がします。それに、これをご紹介したかったのは、もし今後HPVのクライアントのケースに出会ったとき、このGENERALS - Sycosisのルブリックを参照できるなあ、というちゃんとした、実際的な理由もあって(笑)


全て英語ですが、以下のリンク参照:

http://similibus.org/chronicmiasms7

http://dialecticalohmeopathy.wordpress.com/2011/11/29/sycosis-is-it-miasm-of-gonorrhoea-or-human-papilloma-virus-or-a-mixed-miasm-that-confused-hahnemann/

http://www.otherhealth.com/homeopathy-list-discussion/7383-sycosis-common-gonorrhea-1-a.html

2012/01/12

GENERALS : TEARING OUT of something

p.2053

GENERALS - TEARING OUT of something ; sensation of
なにかから、ちぎって引っこ抜く感覚

直訳だとこんな感じ?
Tearingというのは一般的には(紙、布などを)やぶる、引き裂くことを意味します。たぶん、勢いよくちぎりとるように引っこ抜くのかな、と思います。

しかしここの "of something" [なにかから]って曖昧過ぎ。(笑)いったい何?と思いますよね?

レパートリーの他のところにも Tearing と out「勢いよくちぎる、裂く」と「抜く・外に向かって」の単語の組み合わせで探してみたら、関係ありそうなのがありました:
 
p. 721
TEETH : PAIN :
- jerking pain :
・torn out; as if :
 ︙nerves in teeth would be torn out; as if :
 ︙teeth would be torn out ; as if :

歯:痛み:
- ぐいっと引くような痛み:
・まるでちぎりとられるような:
 ︙まるで歯の神経が引きちぎって抜かれたような
 ︙まるで歯が引きちぎって抜かれたような

これなら分かりますね。この例なら、「なにかから」というのが「口・歯茎」などと考えられますね。同じような理解でよいのかなと思います。

ちなみにSynthesis 9.1 書籍版では、GENERALS - TEARING OUT と TEETH - PAIN - jerking pain 両方のルブリックに入っているレメディは8コもありますね。