2023/08/30

MIND : Anger - himself; with = "at odds with oneself"

 MIND - Anger - himself; with
のところで、Radar(シンセシス電子版)にグレーの文字で
= ODDS with oneself; at
とありますが、訳を教えてください。
辞書で調べてもよくわからなくて・・

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これは面白い表現ですね、ありがとうございます!

Odd を辞書で引くと
常軌を逸脱した、異常、異様、ヘンな、という意味や
奇数とか端数とか余分、片割れ、みたいな意味がのってますね。
(そしてまた仲間はずれ、変人とか同性愛者という意味さえ持つようになりました。)

つまり、なにか、違和感、不和がある様子です。

At odds with というフレーズは通常、自分と他者との間で、何か相反するものがあるとか、もめてるとか、食い違いや対立がある状況です。

それが、このルブリックでは、自分の中で起きていることですね。
内面的な葛藤や複雑な気持ち、錯綜する思い、さまざま考えられる「自身との対立」がありますが、
自分に対する怒りもそんな自己との不和、と言えるでしょう。

これに対して、Even が本来望ましい形、という意味が含まれているような気になります。
Even = 偶数、そして安定しているとか落ち着いている、穏やかであるという意味で、ちゃんと対や組みになった(あぶれてない)状態、自分の中でも統制がとれてる状態、ですね。

Ignatia, MIND - Anger - hemorrhage; from arrest of : 止血からの怒り?

 p. 12
MIND - Anger - hemorrhage; from arrest of :
マインド - 怒り - 出血 - 止血からの

 

普通に英語的に読むと「止血からの怒り」は「止血したことによる怒り」「止血したせいで怒った」と解釈します。レメディはひとつ:

Ignatia amara (Ign.)  イグネイシア・アマーラ (出典 Kr1) 

このルブリックの Ignatia の出典は、
カルヴィン・ネール(Calvin Knerr)が編集したレパートリー、
『Repertory of Hering’s Guiding Symptoms』(=kr1) と記されています。


Knerr のレパートリーで該当する元のルブリックをみると:
VEXATION: HEMORRHAGE, AFTER ARREST OF. (煩悶、止血のあと)
VEHEMENCE: HEMORRHAGE, AFTER ARREST OF (激発、止血のあと)

そしてKnerrのルブリックの原典、根拠となるHeringのMMの記述です:
Debility after arrest of hemorrhage, with disposition to be vehement or vexed.
出血停止後の衰弱、 激発したり煩悶したりする傾向を伴う。
(Constantine Hering コンスタンティン・へリング『Guiding Symptoms of the Materia Medica [マテリアメディカにおける指針となる症状]』

止血の後に煩悶・激発が起こるのと、止血の後の衰弱に伴って怒りがあるのと、微妙に違いはあると思いますが、

Synthesisのこのルブリックは、Vexation(煩悶) と Vehemence (激発)を Anger (怒り)でまとめて、
あとはKnerrのレパートリーのまま写してきたような形です。
しかし 上記のHeringのMMに基づいているのなら、Ign.のこの様子を「ルブリック化」する際に症状の要点が微妙にずれてしまった、と言えそうです。

2023/08/23

Synthesis repertory ルブリックの句読点 「;」と「,」

 いつもルブリックを読むとき、英語の語順に直す際にはセミコロン「;」がある場合、その後ろから読み始めることを解説しています。

 MIND - Anger - abused; after being

これを Mind, anger after being abused と読むわけですね。[= マインド、虐待されたあとの怒り]

しかしセミコロンのほかに出てくるのがカンマ「,」です。

MIND - Anger - cursing, with

このカンマについてご質問がありました。

 『カンマもセミコロンと同じと考えて良いですか?』

つまり順番はどうなのでしょう、 Mind, anger with cursingとなるのか、Mind, cursing with anger になるのか。

以下のように答えてみましたが、どうでしょう:

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素晴らしく鋭い疑問です。

カンマ「 , 」の役割は実は曖昧に感じています。

というのは、「ここはセミコロンと同じ」つまり、句読点の前後(順序)がはっきりしている場合もありますが、
前後関係がはっきりしない、あるいは前後関係が曖昧な場合(曖昧なレメディ)もあったりするのです。

昨日見たルブリックの最後の driving, while は haliae-lc. (猛禽類の白頭鷲)というレメディが載っていますね。
このレメディのMMを見ると、明らかに anger while driving、訳せば「運転中に怒り」の記述になっています。Ruta も同様です。「怒っている最中に運転」ではないということです。(微細な違いでかもしれませんが、運転しながら怒り出すのと、前から怒っていて怒りながら車の運転席に乗り込むのを想像すると、なにか違いはありますね?)

しかし、もっと上の cramps, after を様々なMM で調べてみると、生理痛などの肉痙攣と怒りの順番がどちらもあります。怒るのが先にあって、その後に生理痛になるのと、生理痛のあとに怒るのと、両パターンです。

ですので、カンマの役割が曖昧というのは、場合によって、もしかして同じルブリックの中のレメディによって、前後関係が異なることもあったり、前後関係がはっきりしないこと、前後関係があまり重要でないこともあるのではないかと思います。
また、ただ単に編集段階で「 ; 」にするつもりが「 , 」になってしまったというパターンも考えられますね。

2012/09/19

レメディ:Galla-q-r. (=Querc-cyn.)

Galla-q-r.
Galla quercina rubrum


Galla-q-r ブナ科のイギリスナラ(オーク)の木にできた寄生虫、たま蜂の「虫こぶ」から作られたものです。


レメディ名の由来は
Galla (=gall、虫こぶ、没食子)
quercina rubrum (=red oak、日本語では楢ではなく「赤柏」って呼ばれているみたいです。)

また、非常に紛らわしいのですが、MacRepertoryに入っているComplete Repertoryなど、ほかのレパートリーでは時々

Querc-cyn.
という名前でも載っています。

こちらのレメディ名の場合、Quercina(柏) + Cynips (タマバチ)
原料にハチの幼虫 (卵かな?)も含まれていることがレメディ名で分かります。

こぶと言っても、樹の幹や枝にできるものを想像することが多いですが、このオークの場合、
どんぐりの代わりに(本来ならどんぐりが実る部分に)つやのあるグリーン色の、ツンツンした形の異常生長物をつけていたそうです。

イギリスのSchool of Homeopathy の Misha Norland先生のご自宅の前の道路沿いに立っているオークの樹に発生したもので、
ある年の秋、いつもならどんぐりを落とす時期に、この瘤をどんどん落としていたそうです。
Misha先生はそれをいくつか拾って、すり鉢ですりつぶして、ホメオパシー調剤薬局に送ってポテンタイズしてもらい、プルービングを行なったそうです。すりつぶした瘤は奇妙な甘い腐敗臭を放ったと書いています。

プルービングのサイトには写真も載ってます。ひとつの小枝に正常などんぐりとgallnut虫瘤が両方くっついています。

http://www.hominf.org/gall/gallfr.htm


また、Gallという言葉ですが、
「胆汁」という意味で使われたり、胆汁のように苦々しいもの、憎しみや遺恨という意味にも使います。「Gallbladder (胆汁の袋)」は濃縮した胆汁を蓄えてくれている胆嚢です。虫こぶから採れたgallも胆汁のように黄色くて、苦いのですね。

植物の虫こぶから採れたGallは染め物や皮革のなめしに使われるタンニンのもとで、関連するレメディで没食子酸のGallicum acidum (Gall-ac.) というのがあります。参考に比較してみるのも面白いかもしれません。

2012/09/10

MIND : ESCAPE - street

p. 106

Escape, attempts to:
- street; into
・gesticulating and dancing in their shirts

逃げようとする:
- 街中に逃げ出していく
・シャツ姿で身振りをしたり、踊ったりしながら : Bell. (2点)

えー(笑)なに、シャツって?
と思いましたよね。

Knerr(クネールと発音するのかな?ネール?)のレパートリーが出典として記載されてますが、ヘーリングのGuiding SymptomsやアレンのEncyclopediaに元となった一節がありました:

Insanity; they stripped themselves, and, clad only in their shirts, ran out into the streets in broad daylight, gesticulating, dancing, laughing, and uttering and doing many absurd things.
狂気;彼らは服を脱ぎ捨て、シャツだけを着た姿で白昼の街に走って出て行き、身振りをしながら、踊り、笑い、色々な馬鹿げたことを声に出したり、馬鹿げた行動をとった。


ということだそうです。
この様子では、「逃げている」ようにはあまり思えませんけれど...
それに「they、 彼ら」って、複数の人が同時にこんな行動を見せた感じですよね?これはプルービングの様子でしょうか?それとも、ベラドンナ中毒に関する記述?集団ヒステリー?

2012/07/18

レメディ:Kola

p. 95 にある「Despair (絶望)」のルブリックを見ていたとき、
「Kolaってどんなレメディ?」という話しになりました。

MIND - Dictatorial、Discontented、Discouraged、 Dream、Dullness など、ぱっと「D」ではじまるヘッド・ルブリックだけ見ても、頻繁に登場するレメディです。

軽く調べてみました:

 Kola = Kola nut コーラナッツ
アオイ科。ということは、チョコレートの親戚ですね。どちらにも神経興奮作用のあるアルカロイドTheobromine テオブロミンが多く含まれています。

かつてはあの有名な炭酸飲料のコカ・コーラにこのエキスが使われていましたが、今は入っていないようです。ちなみにコカ・コーラのコカはドラッグのコカインだったのですね。コカ・コーラが発明された頃は、コカインとコーラナッツが原料だったということです。すごっ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9_%28%E6%A4%8D%E7%89%A9%29

北米の折衷医学では19世紀末頃から、ホメオパシーのレメディとしてもわりに昔からあるみたいで、Boerickeのマテリア・メディカにも載っています。

しかし、このMINDチャプターにあるルブリックスの多くは、現代のホメオパス Berndt Schuster が行なったプルービングとその後の臨床からくるみたいです。

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まずは、Boerickeから:

 「神経衰弱症。血液循環を調整・制御し、強壮剤で下痢止めとして使える。心拍リズムを制御し、利尿作用もある。弱い心臓。
飲酒癖のレメディ。食欲と消化を促進させ、飲酒の欲求を抑える。
喘息。
食事を摂らずに、また疲れも感じずに、長時間の肉体労働を続ける事ができる。」

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ところで Kola は Kola nidata という名前でも載っている事があるようです。これは Boericke の Kola と同じ種類?明らかではありませんが、同じレメディ名で記載されています。

新しくプルービングされた Kola のレポートが1999年に、ホメオパシーの機関誌『Links』に掲載されました。(プルービングは1996年。)以下、興味深いので軽く訳してみます:

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Bernd Schuster著
Homeopathic Proving of the Cola-nut
Homeopathic Links, 1999

ドラッグ・レメディのグループに属する。

ドラッグは知覚体験を強め、拡張させる目的に使われる事が多く、人間本来の知覚能力の限界を超越させ、境界線を曖昧にするものである。
カンナビスやコカ、コーラとペヨテは神聖な物質として見られ、人間と神や霊たちの世界を繋げさせるものと考えられている。

このコーラのプルービングはハーネマニアンな方法論に基づいて実施され、23名の参加者で行なわれた(1996年、ドイツ)。全能である(無限の力がある)、地球全体を肩に背負うことができる、他の人の肉体を透かして、その人の内面を見つめたり、人の思考が読み取れる、というように、まるで神のような性質や能力の感覚があった、という証言がプルービングから出てきた。これらは Delusions of grandeur (偉大さ、壮麗さ、壮大さのデリュージョン)と表現できるでしょう。

このレメディの中心には「Insatiability––決して飽くことをしらない/足るを知らない/満足・満腹にならない」という観念が見られる。『私はまるで底なしの穴』。
摂食障害(食べても満腹にならない、毒を盛られる恐怖)や躁病、活動過多、糖の代謝障害、下痢などの胃腸の障害、自信に関する問題(これはCocaにも共通)、抑うつ、不眠(疲労)、不安な夢、片頭痛、などが見られる。これまで診てきたColaの患者はほとんど、LSDやコカインなどのドラッグ依存の既往歴があったり、アルコール依存や摂食障害の既往歴が見られた。

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上に上げられているドラッグ「カンナビス、コカ、コーラ、ペヨテ」、いずれもレメディとして存在します。
カンナビス はCannabis indica / sativa、マリファナですね。
コカはそのままCocaでコカイン。
ペヨテは、Anhaloniumのことです。

2012/06/21

MIND - DELUSIONS - something else

p. 86

MIND - DELUSIONS
- something else:
・chest;something else comes from above which is pressing the:

- 別の物
・胸部;何か別の物が上からきて押さえつけている:


Sepiaが1点で入っていますね。

先ほどはAllenのEncyclopediaに載っている文章を紹介しましたが、このルブリックの元の出処はハーネマンの『慢性病論』第2部のSepiaのマテリアメディカ、1529番目の段落でした。(ひとつひとつの症状に番号がふってあります。)Samuel Hahnemann, The Chronic Diseases, Homeopathic Book Publishers版  p.1392。


Anxious dream, at night, as if he was being chased, and had to run backward,
夜、まるで追われて、後ろ向きに走らなければならないような、不安な夢を見る。

(この部分は月曜日に見たルブリック p. 83 MIND - DELUSIONS - run - backward になってますね。)

…when awakened, he imagined, that something which oppressed his chest was coming down upon him from above, 
目が覚めると、彼は何かが自分の上に降りてきて胸を圧迫していると想像、

…then crawling and stitches in the chest.
次に這う
(むずむずする)ような、縫うような感覚があった。

・・・というわけで、この症状は「上から*何かが*降りてきて胸を圧迫/押さえつけていることが分かりますね。「else 別の物」は元の記述にないし、この症状の様子をわかり難くしているんじゃないでしょうか。

また、見出しのキーワードが「something else」ですが、この症状を調べようと思った人は「何か(他の物)が」などで引きませんよね。鍵となっているのはむしろ「上から降りてきて胸を圧迫する」感覚でしょう。この症状は「above; coming down from」とか「chest; oppressing the」というルブリックにした方が見つけやすいのではないかなあ、と思ってしまいます。いかがでしょうか?

ただし、ここの次のサブルブリックは「something else(何か別の物)」という点が重要ですね:

- something else
・objects appear as if something else

- 別の物
・物が、まるで別の物に見える